数十年前までは、小中学校でも解剖実習が行われていました。
しかし、実際に生き物を使う解剖実習では、子供に与えるショックも大きく様々な問題を抱えていました。
そのため現在では、動物愛護の観点からも解剖実習を行う学校はかなり少なくなっています。
時代はイラストからVRへ
小中学校の教科書も、解剖写真の掲載はイカなどの軟体動物となっています。
人間の内臓器官も、イラストのみの掲載です。
しかし、本当に生き物の身体の仕組みを学び知識を身につけるなら、イラストだけでは不十分な部分もあります。
そこで、コンピュータの活用、ビデオ、3Dの模型など様々など、様々な学習法が取り入れられています。
そして、新たな学習方法としてVR教材の開発が進められています。
VRを活用することで、実際に生き物を使わなくても、よりリアリティあふれる学習が可能になるというわけです。
今回は、この取り組みについて見ていきたいと思います。
お茶の水大学と富士通が開発
動物解剖実習の代替となるVR教材は、お茶の水女子大学と富士通が共同で開発しています。
富士通では以前から、日本の教育に沿った教育用VRの開発を検討していました。
これに対しお茶の水女子大学が、企業の資金で試作品を開発する産学連携の新プロジェクト「オチャ・ソリューション・プログラム」を企画し受託した形です。
開発には、サイエンス&エデュケーションセンターの生理学や画像を専門とする教員の下、理学部生物学科の学生も参加しています。
学生がラットを解剖し、それを撮影したものを3D画像として構築しています。
VR教材では、腹部から肝臓を持ち上げたり、小腸を伸ばしたりしての長さを実感することもできます。
影が観察の妨げにならないよう、ラットを置く回転台や照明にも工夫が施されています。
これにより、奥のほうに位置する臓器もしっかり観察することができます。
四川大学でもVRが活躍
中国の四川大学では、「人衛3Dシステム解剖学」VR版が授業でも活躍しています。
このVR教材は、人体の標本不足による学習機会の不足を補うことに成功しています。
VR教材では、人体の各器官・構造を全面的・立体的に観察することができます。
また、各器官を自分の目の前に近づけ、細部まで観察することもできます。
全ての器官は本物さながらに再現されており、生徒はリアリティあふれる学習をすることができます。
特に平面では表現しづらい神経系の構造も再現されており、より知識を深めることができるのです。
VRは大きな可能性がある
このように、VRを活用することで、実際の動物を殺すことなく生き物の身体の仕組みを学習することが可能となります。
また、医療の実習においても、人体の構造をきちんと把握することが可能です。
すでにアメリカでは、VRによる身体の仕組みの勉強は普及しています。
教育分野におけるVRの活用は、大きな可能性を持っているのです。
今回紹介したVR教材も、数年以内の実用化を目指しています。早く普及し、より深い学習ができるようになればいいですね。