不用意に線路内に入ってしまったためはねられる、橋の点検中転落してしまうなど、鉄道会社の職員は危険と隣り合わせで毎日人々を運んでくれています。電車は車以上にブレーキをかけても急には止まらないので、ちょっとした油断が命取りになってしまいます。
線路周辺や車両基地で作業を行う人々は、細心の注意を払い仕事を行わなければなりません。しかし、毎日の仕事で慣れてしまうとついつい油断してしまうものなのです。
JR西日本では、少しでも労働災害を減らすためこれまでも安全教育に力を入れてきました。しかし、従来の安全教育では、危険な作業を再現するわけにはいかず、どうしてもリアリティの欠ける研修であったため、従業員の危険への意識を向上させることができませんでした。
そこで導入されたのが、VR技術を活用した安全教育プログラムです。災害を疑似体験できるVRなら、災害防止への意識を高めることができるというわけです。
・9種類の労働災害をVRで再現!!
VR安全教育プログラムは、誰もが陥る可能性のある「日常業務に潜む労働災害の原因となるワナ」を題材として作成されています。
鉄道現場では、駅係員や乗務員など様々な仕事をする人がいます。また、仕事をする場所も車両内や施設、電気系統など様々です。
プログラムではこれらを系統に分け、列車に接触する場面や、高所から転落する場面など、計9つの労働災害をVR映像で再現しています。
VRプログラムは、よりリアリティを増すためにCGではなく実写を使い作成されています。これにより、安全への意識を向上させることができるでしょう。
また、災害の恐怖感をあおることよりも、災害に至るプロセスを体感することを重視して作成されています。これにより、現場で注意すべきことや安全確認の重要性を理解することができるのです。
・グループ会社の35000人が体験
JR西日本のVR安全教育プログラムは、ソフトバンクが協力して開発されました。「JR西日本グループ鉄道安全行動計画2022」で掲げられている、ヒューマンファクターの観点を取り入れた実践的な教育プログラムの一つとなっています。
このVRプログラムは、大阪府吹田市にあるJR西日本社員研修センターに導入されます。研修の対象となるのは、グループ会社なども含めて鉄道事業に従事する社員で、約35000人が対象です。
2018年5月以降から本格的に導入され、労働災害の撲滅に向けて活用される予定となっています。
安全教育にVRを活用する企業はどんどん増えています。たとえば、建築現場の安全教育や工場での安全教育、交通安全教育など、様々な企業で活用が進んでいるのです。
従来の座学やビデオによる学習では、災害がどこか他人事のようで自分のことと感じることができませんでした。しかしVRを使えば、自分が事故の当事者になる体験ができるので、災害への意識が確実に向上するのです。
労働災害を減らすには、災害への意識が最も重要となります。なぜなら、そこから油断が生まれるからです。
災害から従業員を守るためにも、VRの活用を検討してみてください。
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